新しいコンセプトに基づいたシリコン・チタン・タングステン電析用溶融塩―溶融塩電気めっき技術の実用化を目指して―
溶融塩とは、塩そのものが溶融したものであり、イオンのみからなる液体です。例えば身近な塩であるNaClを融点以上に加熱して溶かすと、Na+とCl−のみからなる液体となります。溶融塩は電気化学的に安定なため、溶融塩中からは様々な金属を電析することができます。そのため、金属製錬やめっきの分野での利用が期待されており、すでにアルミの製錬などでは実用化されています。一方で、溶融塩を用いて電気めっきを行うと、めっき膜表面に付着した塩が固化してしまい、これをきれいに除去するのが難しいことが、実用化に向けた課題の一つでした。
京都大学エネルギー理工学研究所 野平俊之 教授、法川勇太郎 同助教らは、全く新しいコンセプトである、「塩の高い水溶性」と「高いめっき能力」の両方を兼ね備えた溶融塩を開発しました。具体的には、KF-KClおよびCsF-CsClで、それらを用いたシリコン、チタン、タングステンのめっきに成功し、平滑で緻密な膜が得られることを実証しました。本技術は他の金属のめっきにも応用可能であり、今後のさらなる進展が期待されます。
本成果のまとめが、2023年7月4日にAmerican Chemical Societyの国際学会誌「Accounts of Chemical Research」にて出版されました。