レーザーによる超高品質な極浅構造の作成 ―多層薄膜の構造化へ道―
各種材料のレーザー加工は既に様々な用途でなされていますが、単一のレーザーパルス照射によってレーザー加工痕の周囲にはクレーターまたはリムと呼ばれる盛り上がりがナノ秒レーザーの場合には顕著に、また、ピコ秒/フェムト秒レーザーの場合でもごくわずかではありますが発生してしまいます。レーザーパルスを多重照射するとこのわずかな歪みが蓄積しますから、レーザー照射位置を空間的に固定または掃引しながら多数のパルスを照射して穴またはライン状の構造を作成する場合には、本質的に歪み発生が小さいピコ秒/フェムト秒レーザー加工であってもリム発生の問題は無視できなくなります。また、一般的なレーザーパルスには空間的な強度分布があるため、平坦な底面を持つ微細構造をレーザー加工で作成することも容易ではありません。
これらの問題を解決するため、京都大学エネルギー理工学研究所 中嶋隆准教授、曽田圭亮修士課程学生(研究当時)らの研究グループは、バルクの金属ではなく、バルクの金属面にごく薄い金属膜を蒸着したものをターゲットとして使用し、極薄金属膜のみをレーザーで選択的に除去することによって、超高品質な極浅構造を作成しました(下図)。
本研究成果は、2024年3月16日に国際学術誌「Optics and Laser Technology」にオンライン掲載されました。