二次元半導体を重ねたモアレ縞からの量子コヒーレンス測定に成功:次世代ナノ半導体による量子技術への第一歩
量子コンピューターに代表される量子技術では、量子ビットと呼ばれる演算単位を用意する必要があります。そのような量子ビットでは、量子的な波の状態がどれだけの時間維持されているかを示す、量子コヒーレンス時間が重要な量となっています。近年、わずか原子数層の極めて薄い二次元半導体と呼ばれる次世代ナノ半導体において、その二次元半導体を重ねてできるモアレ干渉縞に閉じ込められた、電子とホール対(モアレ励起子)を量子ビットとして機能させることが期待されています。しかし、このモアレ励起子の量子コヒーレンス時間に関する情報は、技術的な困難さから未解明のままでした。Haonan Wang エネルギー科学研究科博士課程学生 、物質・材料研究機構の渡邊賢司 特命研究員、谷口尚 理事、篠北啓介 エネルギー理工学研究所 助教、松田一成 同教授らの研究グループは、技術的な困難である光で生成されるモアレ励起子の数を減らす新たな技術を開発し、その量子コヒーレンス時間を測ることに成功しました。これは、次世代ナノ半導体による量子技術への応用に向けた第一歩であると考えられます。
本研究成果は、2024年6月8日、「Nature Communications」にオンラインで掲載されました。